庶民の景気 2014 11 1

 昨日、日本銀行は、電撃的で大規模な「追加の金融緩和」を発表しました。
それを受けて、株式市場は、急騰しました。
市場関係者は、大喜びでしょう。
 このような金融緩和は、確かにデフレ対策には有効でしょうが、
はたして、庶民の景気には、効果があるでしょうか。
株価が急騰しても、庶民は株式を保有していないでしょう。
 また、追加の金融緩和を受けて、
為替レートは、急激な円安(通貨安)となりました。
 日本は、輸出大国であると同時に、輸入大国でもあります。
つまり、食糧や資源を大量に輸入しています。
こうした状況で、通貨安になれば、庶民の生活に悪影響が出るでしょう。
 円安になれば、輸出企業が儲かるので、
やがて、庶民の収入も賃金上昇という恩恵を受けるのではないか。
これは、古い考え方です。
 多くの輸出企業は、2009年から2011年まで続いた、
深刻で急激な円高によって、外国へ出て行ってしまいました。
 今回、円安になったから、
外国へ出て行った日本企業が、日本に戻ってくるのではないか。
これは、甘い考え方です。
 日本は、とにかく電気料金が高い。
これが、工場にとっては、致命的です。
 昔から、日本は電気料金が高かったのですが、
ここ数年は、高い電気料金が、さらに高くなりました。
(下記の「電力と産業 2011 7 2」を参照)
 国際基準からすれば、
日本は、電気料金が高く、人件費も高いので、
おそらく、日本企業は、日本に戻ってこないでしょう。

電力と産業 2011 7 2
 昔話をしましょう。
私の記憶が正しければ、今から数十年前の話です。
 「今から数十年前」というと、日本企業の黄金時代だったと思います。
外国からは、「日本企業は、世界最強である。
日本式の経営はすばらしい」と、
次々に、称賛されていた時代だったのです。
 ところが、その黄金時代でも、
日本企業の一部には、衰退している分野があったのです。
それは、アルミニウム業界です。
アルミニウムは、「電気の塊」と言われることがあります。
つまり、アルミニウムを作るには、大量の電力が必要です。
 日本は、外国に比べ電力料金が高く、
国内でアルミニウム精錬は経営的に困難で、
次々と生産拠点が海外に移ったのです。
(オイルショック後の電力料金の高騰が原因と言われます)
 もちろん、日本において、アルミニウム業界が「絶滅」したわけではありません。
唯一、一社だけ残っています。
日本国内において、原石(ボーキサイト)から製品まで一貫生産を行っているのは、
日本軽金属のみとなりました(2011年当時)。
 日本軽金属の場合は、自前の「水力発電所」を保有し、
「自家発電」をしているので、何とか国内生産を維持しています。
 産業にとって、電力は非常に重要です。
設備投資(工場)を考える上で、最も重視する要素です。
 最近、電力供給の不安がニュースになります。
「大企業どころか、中小企業までも海外移転し、
日本企業は、日本国内において、絶滅危惧種になる。
アルミニウム業界で起こったことは、日本企業の未来を予見するものだった」
 そんな事態が起きないように、政府及び地方自治体は、
電力供給の安定性に対して最大の支援をすべきです。



























































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